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生活保護受給者は交通事故慰謝料を受け取れる?

2023年08月22日

交通事故の被害者が生活保護受給者であったとしても、被害の程度に応じた損害賠償を加害者側に請求できます。

しかし、加害者側から損害賠償として受け取った慰謝料については、生活保護上では収入として扱われるのが一般的です。

今回の記事では、生活保護における交通事故慰謝料の返還義務について詳しく解説していきます。

 

生活保護受給者は交通事故の慰謝料を返還しなければならない

生活保護受給者が交通事故に遭ってしまった場合、原則として受け取った慰謝料は自治体に返還しなければなりません。

本来であれば交通事故による慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛を補償するお金であるため、被害者本人が全額をそのまま受け取れます。

しかし、生活保護法の第63条では以下のように規定されています。

(費用返還義務)
第六十三条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

上記における「資力」は、収入と同じような意味と考えましょう。

収入があるにもかかわらず生活保護費を受給した際には、受給した生活保護費相当額の返還義務が生じます。

交通事故による慰謝料は生活保護上の「収入」

交通事故による慰謝料は、生活保護上における「収入」に該当します。

厚生労働省が通知している「生活保護法による保護の実施要領について」では、収入に認定しないものとして以下の規定があります。

(3) 次に掲げるものは、収入として認定しないこと。
オ 災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額

補償金や保険金などのうち、自立更生のためにあてられる額は収入とは認定されないため、生活保護費相当額の返還義務は生じません。

しかし、交通事故の慰謝料は、過去の裁判例でも自立更生のためにあてられる額と認められるケースは少なく、生活保護上では収入と考えられるのが一般的です。

 

交通事故慰謝料を返還しなくて良いケース

生活保護受給者は交通事故慰謝料の返還義務がありますが、必ずしもすべて返還しなければならないわけではありません。
・賠償金を全額返還する必要はない
・自立更生に必要な額の返還はなし

ここでは上記の項目別で、交通事故慰謝料を返還しなくていいケースについて見ていきましょう。

賠償金を全額返還する必要はない

慰謝料を含む損害賠償金は、自治体へ全額返還が必要とは限りません。

生活保護法第63条で返還義務があるとされているのは、収入があるにもかかわらず保護を受けたときの生活保護費相当額です。

基本的には、交通事故発生日から治療が終了するまでの間に受給した生活保護費を返還する必要があります。

返還する生活保護費よりも損害賠償金が上回っていれば、残った金額は生活保護受給者の収入として受け取れます。

自立更生に必要な額の返還はなし

自立更生に必要な額と判断された場合、その分のお金を返還する必要はありません。

たとえば、交通事故のケガが原因で後遺症が残り、自宅の改造費用が必要となったケースなどでは、賠償金の一部が自立更生に必要と認められる可能性があります。

交通事故後の原状回復に必要な資金であれば、自立更生に必要な額とみなされる可能性が高いといえるでしょう。

 

生活保護費相当額の返還時期

生活保護受給者が交通事故慰謝料の返還をしなければならない時期は、法律上と実務上で異なる場合があります。
・法律上の慰謝料返還時期
・実務上の慰謝料返還時期

基本的には、収入が発生したタイミングと同時に返還義務が生じると考えるのが一般的です。

収入発生のタイミングは法律上と実務上でどのような考え方がされるのか、以下で詳しく確認していきましょう。

法律上の慰謝料返還時期

厚生労働省が各都道府県や各指定都市民生主管部長などに通知した文書では、返還時期の考え方として以下の内容が記載されています。

(2) 自動車事故の場合
自動車損害賠償保障法により保険金が支払われることは確実なため、事故発生時点

自動車事故では自賠責保険による保険金の支払いが確実であるため、事故発生時点で収入が発生したとみなされるといった内容です。

そのため、法律上では生活保護受給者が交通事故に遭った時点から、生活保護費の返還義務が生じると判断できます。

実務上の慰謝料返還時期

一方、実務上の返還時期に関しては、法律上の考え方とは異なる場合があります。

東京都福祉保健局が定める「生活保護運用事例集2017」では、慰謝料の返還時期については「確実に支払われると判断された時点(示談成立日)」としています。

自賠責保険から保険金(慰謝料を含む)が支払われる場合についても、以下のように定めています。
・交通事故でケガを負った場合:事故発生日
・交通事故で死亡した場合:死亡日
・交通事故で後遺障害が残った場合:後遺障害等級の認定日

必ずしも事故発生時点で返還義務が生じるとみなすのではなく、各自治体によって実情を考慮して判断されているといえるでしょう。

 

もし賠償金を受け取ったら生活保護は止まる?

交通事故による損害賠償金を受け取った場合、生活保護が止まる可能性はあります。

しかし、生活保護が一時的に停止となるか、廃止となるかは受け取った賠償金の額によります。

返還義務のある生活保護費を返還した後、手元に残った賠償金額が生活保護費相当額の半年分以上であれば廃止、半年分未満であれば一時停止となるケースが多いです。

各自治体の裁量によって対応が異なる場合もあるため、正しい申告をした上で自治体の判断を待ちましょう。

 

生活保護受給者が交通事故に遭ったら担当ケースワーカーに相談


生活保護受給中に交通事故に遭ってしまったら、まずは担当のケースワーカーに相談しましょう。

交通事故の内容や受け取れる可能性のある賠償金・保険金などの情報を伝えると、生活保護費の返還について指示をもらえます。

返還が必要な期間や金額の内訳、その後の生活保護受給がどのように扱われるかは個別の状況によって異なるため、ケースワーカーに確認しておく必要があります。

自治体へ申告しなかった場合はどうなる?

自治体へ賠償金の受け取りを申告しなかった場合、不正受給とみなされるおそれがあり、生活保護費の返還だけでなく生活保護廃止の対象となります。

また、生活保護法違反により3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性もあります。

収入を得た際の生活保護費返還は法律で規定されている義務であるため、交通事故の慰謝料や保険金を受け取った場合は必ず担当ケースワーカーに報告するようにしてください。

 

慰謝料を請求できないケース

交通事故の慰謝料は、入通院などによる精神的苦痛を補償する目的で支払われます。

医療機関による治療を受けていない場合は、原則として加害者側に慰謝料請求ができません。

交通事故でケガを負った際は、早い段階で医療機関を受診するようにしましょう。

適切な慰謝料を請求するためには、医師の指示に従って最後まで治療を受ける必要があります。

 

生活保護受給者が交通事故慰謝料の返還で悩んだら弁護士へ相談しよう

交通事故による慰謝料は、生活保護上では基本的に収入とみなされ、返還義務が生じます。

生活保護費相当額の返還をしても多くの金額が手元に残った場合は、生活保護の一時停止や打ち切りが言い渡される可能性もあるでしょう。

返還の対象となる期間や、返還が必要な金額は、自治体との交渉で争点となりやすいポイントです。

自治体から提示された条件に納得できない場合や、生活保護費の返還を求められて困ったら、早めに交通事故に強い弁護士へ相談するのをおすすめします。

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