地元の弁護士に交通事故の解決を依頼すべき理由
交通事故の被害に遭われた方が、インターネットで弁護士を探すとき、多くの場合、検索結果の上位には東京の法律事務所のホームページが並びます。確かに、都会の法律事務所は弁護士の人数も多く、ホームページも充実していて、豊富な解決実績が掲載されているため、一見、信頼できそうに見えます。
私は弁護士として15年以上、福井市という地方で多くの交通事故事案を担当してきました。その経験の中で、都会の法律事務所に依頼したものの、期待していた結果が得られなかったというケースを何度も見てきました。特に地方にお住まいの方が、遠方の弁護士に依頼することで生じる問題は決して小さくありません。
実は、交通事故の解決において、地元の弁護士に依頼するメリットは想像以上に大きいのです。適切な賠償金を獲得するためには、弁護士との綿密な打ち合わせや、場合によっては裁判も視野に入れた交渉が必要になります。
この記事では、私の経験を基に、なぜ交通事故の解決を地元の弁護士に依頼すべきなのか、その理由を具体的に説明していきます。
都会の法律事務所に依頼するリスク
都会の法律事務所に依頼することで生じるリスクについて、具体的な事例を交えながら説明していきましょう。
遠方の法律事務所への移動負担
交通事故の適切な解決には、弁護士との詳細な打ち合わせが欠かせません。被害の状況や治療の経過、事故による生活への影響など、書面だけでは伝えきれない重要な情報を共有する必要があるためです。
例えば、福井から東京の法律事務所に依頼した場合、1回の打ち合わせのために往復6時間以上の移動時間が必要になります。交通事故による怪我の影響で長時間の移動が困難な方も多く、この身体的・時間的負担は決して小さくありません。また、打ち合わせが複数回必要になることを考えると、交通費の経済的負担も無視できません。
示談交渉における不利な立場
さらに重要な問題として、都会の弁護士が地方の事案を担当する場合、示談交渉で不利な立場に立たされることがあります。
交通事故の事案で保険会社との交渉が難航した場合、最終的な解決手段として裁判を提起する可能性も考慮に入れる必要があります。その際、裁判を行う場所は原則として事故当事者(被害者、加害者等)の住所か、事故が発生した地域の管轄の裁判所となります。
私の経験では、都会の法律事務所の中には、遠方での裁判を避けるために、本来であれば得られたはずの賠償額よりも低い金額で示談に応じてしまうケースが少なくありません。つまり、「いつでも裁判ができる」という交渉上の重要なカードを、最初から放棄してしまっているのです。
新人弁護士が担当するリスク
また、大規模法律事務所では、ホームページに掲載されているベテラン弁護士が必ずしも担当するとは限りません。むしろ、経験の浅い新人弁護士が実際の担当となることも珍しくありません。
さらに、インターネット広告に多額の費用をかけている事務所の中には、広告費用の回収を優先するあまり、適切に処理できる件数を超えて事件を受任し、一つ一つの事案に十分な時間を割けていないケースもあります。結果として、依頼者の期待に応えられない解決に終わってしまうことがあるのです。
地元の弁護士を選んだ場合のメリット
地元の弁護士に依頼することで得られるメリットは、単に移動の便利さだけではありません。交通事故による被害の適切な回復のために、地元の弁護士を選んだ場合のメリットについて説明していきましょう。
密接なコミュニケーションがもたらす適切な解決
交通事故の被害者の方々が本当に必要としているのは、単なる賠償金の獲得だけではありません。事故によって失われた日常生活の回復であり、将来への不安の解消です。
地元の弁護士であれば、必要に応じて気軽に面談の機会を設けることができます。顔を合わせての打ち合わせを重ねることで、依頼者やご家族の心情をより深く理解し、真に必要な解決方法を見出すことができます。私たちの事務所でも、このような直接的なコミュニケーションを通じて、依頼者の方々から「不安が和らいだ」「心強かった」という声を多くいただいています。
保険会社との交渉力
地元の弁護士は、いつでも裁判所での解決を選択肢として持っているため、保険会社との交渉においても強い立場に立つことができます。実際の裁判を想定した準備を整えながら交渉を進めることで、示談の場面でも適切な賠償額を引き出すことが可能になります。
もちろん、すべての事件について裁判で解決する必要はありません。私の事務所でも多くの事件は、裁判に至ることなく、示談で解決しています。
しかし、適正な賠償金を獲得するためには、いつでも裁判ができることを前提に保険会社と強気で交渉することが、示談においても適正な賠償金を獲得するためには重要になってきます。
事故現場の確認や主治医面談などの対応ができること
事故現場の確認によって、道路状況や交通量、天候の影響など、事故の状況を正確に理解することも重要です。
また、適切な後遺障害の等級認定のためには、必要に応じて主治医との面談も行うことも重要になります。
事故現場の確認や主治医面談などは、地元の弁護士でないと対応が難しい場合が多いです。
私たちの経験では、このような地元の弁護士だからこそできる活動を通じて、交通事故被害者の権利を守ることができていると感じています。
適切な弁護士の選び方
ただし、地元の弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。交通事故の解決には専門的な知識と経験が必要です。ここでは、地元の弁護士の中から、適切な弁護士を選ぶためのポイントについて説明していきます。
交通事故の専門性を見極める
弁護士は、さまざまな法律分野を取り扱うことができます。しかし、交通事故において適切な賠償金を獲得するためには、医学的な知識や保険実務に関する深い理解が必要です。そのため、交通事故の分野で豊富な経験を持つ弁護士を選ぶことが重要になります。
具体的には、弁護士のホームページで交通事故に関する詳しい説明や解決事例が掲載されているかどうかをチェックしましょう。
初回相談での確認事項
多くの法律事務所では、初回相談を無料で受け付けています。この機会を活用して、以下のような点を確認することをおすすめします。
まず、あなたの事故の状況について、弁護士がどのように分析するのかを聞いてください。経験豊富な弁護士であれば、類似の事案の解決例を交えながら、具体的な見通しを説明してくれるはずです。
また、実際の担当弁護士が誰になるのかも確認しましょう。事務所によっては、初回相談と実際の担当が異なることもあります。できれば、実際に担当する弁護士と直接話をすることが望ましいでしょう。
さらに、弁護士費用の説明も重要です。交通事故の場合、多くは損害賠償金から報酬をいただく成功報酬制を採用していますが、その具体的な計算方法や、必要な経費についても、明確な説明を求めましょう。
まとめ
交通事故の解決において、弁護士選びは極めて重要な決断です。インターネットで目にする都会の法律事務所は、一見、魅力的に映るかもしれません。しかし、地方にお住まいの方にとって、地元の弁護士に依頼することには大きなメリットがあります。
適切な賠償金を獲得するためには、依頼者との綿密なコミュニケーション、そして保険会社との粘り強い交渉が必要です。地元の弁護士であれば、必要に応じて柔軟に打ち合わせの機会を設けることができ、事故現場の状況も詳しく確認し、主治医との面談もすることができます。また、いつでも裁判での解決を選択肢として持っているため、示談交渉においても適切な賠償額を引き出すことが可能です。
ただし、すべての弁護士が交通事故の分野に精通しているわけではありません。事務所のホームページやブログで専門性を確認することをおすすめします。そして、実際の担当弁護士との面談を通じて、信頼できる弁護士を選んでください。
交通事故の被害に遭われた方は、様々な不安を抱えていらっししゃることと思います。一人で悩まず、まずは地元の弁護士に相談することから始めてみましょう。
私たちは、依頼者の方々の権利を守り、適切な賠償を実現するために、専門的な知識と経験を活かして全力でサポートいたします。
(執筆者 弁護士 小前田 宙)