交通事故の営業損害とは?賠償項目や算定方法
2025年12月8日

交通事故に遭い、会社や店舗を休業せざるを得なくなった際、問題となるのが「営業損害」の補償です。
とくに自営業者や個人事業主の場合、事故によって収入が減少すれば生活や事業に直結する重大な影響を受ける可能性もあります。
しかし、営業損害とはなにか、またどのようなケースで請求できるのか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、営業損害の概要や請求が認められる条件・損害額の計算方法・注意点などについて、わかりやすく解説します。
納得のいく補償を受けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
交通事故の営業損害とは?

交通事故における「営業損害」とは、事故の被害で事業活動ができなくなり、休業せざるを得なくなった場合に生じる損失です。
主に、営業に必要な店舗や事業所・営業車などが損害を被った場合に生じます。
まずは、営業損害に関する基本的な事項について確認していきましょう。
・営業損害は加害者に請求できる損害賠償項目の一つ
・営業損害の請求が認められる条件
・営業損害と休業損害の違い
営業損害を加害者に請求できる根拠と認められる条件、休業損害との違いについて、以下で詳しく解説します。
営業損害は加害者に請求できる損害賠償項目の一つ
営業損害は、民法上の「損害賠償請求権」に基づき、事故の加害者に請求できる法的な補償の一つです。
民法では、「故意または過失によって他人に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負う」と定められています。
交通事故によって本来得られるはずだった営業利益が失われたと認められれば、加害者またはその保険会社に対して請求が可能です。
たとえば、店に車が衝突して損害が発生した場合、修繕のために休業した期間の利益は営業損害として請求できます。
ただし、営業損害を請求するには、休業した期間や損害額と事故の因果関係を立証しなければなりません。
営業損害の請求が認められる条件
営業損害の請求が認められるためには、「事故との因果関係」「実際の損失」「営業実態」などの立証が必要です。
まず、「事故がなければ通常通り営業できていた」と証明できる資料を集めましょう。
事故前の売上や経費を詳細に示せる資料があれば、損害を裏付ける証拠として役立ちます。
また、修理に必要な期間(営業再開までにかかる期間)や失った利益の算出も必要です。
単純に「事故のせいで利益が減少した」と主張するだけでは営業損害は認められないため、客観的な証拠を用意する必要があります。
営業損害と休業損害の違い
営業損害とよく似た言葉に、「休業損害」があります。
休業損害も加害者に請求できる損害賠償項目の一つですが、対象者や計算方法が異なります。
休業損害は、事故によるケガが原因で仕事を休まざるを得なくなった場合に生じる収入の減少です。
主に給与所得者や家事従事者が対象となり、仕事を休んだ日数分の給与相当額が補償されます。
対して営業損害は、事故が原因で会社や店舗が営業できなくなった場合に生じる利益の減少です。
主に自営業者や会社経営者が対象となり、売上から経費を差し引いた「営業利益」が損害額の基準になります。
同じ「仕事ができないことによる損害」であっても、立場や収入の種類によって補償の考え方が異なるため注意しましょう。
交通事故における営業損害の算定方法

交通事故による営業損害は、主に事故前の売上や利益を基準として計算されます。
ただし、売上そのものが補償されるわけではなく、経費を差し引いた「実質的な利益(営業利益)」が損害として認められます。
そのため、経費の内訳や性質に応じた細かい計算が必要です。
・交通事故前の売上をもとに計算する
・経費の種類によって取り扱いが異なる
これらを把握しておかなければ、損害賠償請求額が正確に計算できません。
営業損害の算定のポイントについて、以下で詳しく見ていきましょう。
交通事故前の売上をもとに計算する
営業損害は、「事故前の一定期間における売上・利益」をもとに計算します。
一般的なのは、交通事故からさかのぼって3ヶ月間の平均売上を基準とするケースです。
たとえば、事故前の3ヶ月間の売上が150万円だった場合、月あたりの売上は50万円となります。
月あたりの売上から経費を差し引き、営業が停止した期間(月数や日数)をかけ合わせることで、営業損害額の推定が可能です。
しかし、業種によっては時期や季節などで売上に大きく差が出る場合もあるでしょう。
そのような場合は、過去3年間の同時期の平均売上をもとに算出するケースもあります。
経費の種類によって取り扱いが異なる
営業損害の金額を算出する際には、売上から「経費」を差し引いて営業利益を求めます。
経費には「変動経費」と「固定経費」の2種類があり、それぞれ扱いが異なります。
・変動経費
・固定経費
この違いを理解しておかなければ、営業損害を適切に算出できません。
以下では、それぞれの経費の特徴と営業損害算出時の扱いについて解説していきます。
【変動経費】
変動経費とは、売上の増減に応じて発生する経費を指します。
たとえば、商品の原材料費・仕入原価・外注費・販売にかかる送料などです。
営業活動が停止している間はこれらの経費が発生しないため、営業損害の算定からは控除されます。
つまり、事故による営業停止期間には変動経費は発生していないため、事故の相手方にも請求できないという考え方になります。
【固定経費】
固定経費とは、営業の有無にかかわらず継続的に発生する経費です。
地代・家賃・人件費・リース代・水道光熱費などがこれに当たります。
これらは営業を停止していても支払いが続くため、営業損害の中に含めて請求が可能です。
たとえば、店舗を休業していたとしても賃料の支払い義務は残るため、この家賃相当分は損害として認められることになります。
固定経費が多い業種では、その分営業損害額が大きくなる可能性が高いといえるでしょう。
交通事故で請求できる営業損害以外の損害賠償項目

交通事故に遭った際は、営業損害以外にもさまざまな損害賠償項目を加害者に請求できます。
代表的なものとしては、治療費・通院交通費・入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・休業損害・車両の修理費などが挙げられます。
また、事故の影響で店舗内の商品が破損した場合や、什器などの設備に損傷を受けた場合も、その修理費や再調達費を請求可能です。
被害状況によって請求できる項目は異なるため、被害品の破損状況や修理見積もり・購入価格などの情報は整理しておきましょう。
また、ケガをした可能性がある場合は、痛みなどの自覚症状がなかったとしてもすぐに病院で診察を受けることが重要です。
交通事故で営業損害を請求する場合は弁護士に相談しよう

交通事故によって事業活動に支障が生じた場合、その損失を補償してもらうには、損害状況を具体的に証明しなければなりません。
事故の相手方の保険会社からは、実態に見合わない金額を提示されるケースも多くあります。
保険会社から提示された金額に安易に同意するのは避け、適切な内訳と金額になっているかどうかを必ず確認するようにしましょう。
しかし、損害賠償金の判断や証拠の収集・交渉には専門的な知識が求められます。
そのため、事故に巻き込まれた際は交通事故問題に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、営業損害の立証や損害賠償金額の計算、保険会社との交渉まで幅広くサポートを受けられます。
適正な補償を受けて事業を守るためにも、早めの相談を検討しましょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
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